「怖い絵」で人間を読む /中野京子


「怖い絵」で人間を読む

西洋絵画って興味ありますか?

昨年ボルドー展に行った時にも書きましたが、私はそんなに興味ありません。
教科書に出てきた絵とかをなんとなく覚えている程度。

でもこの本。
本屋さんでなにげなく手にとって、パラ見。
その絵の背景、小物に託された意味、描かれた人物の史実上でのエピソードなどを知った上でその絵を眺めると面白い!
ってことで、そのままレジに向かいました。

例えば、ハンスホルバイン作『大使たち』という絵。
これを美術館で眺めたなら、まずハンスホルバインってだれそれ??状態です。
しかも描かれているふたり。

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大使たちっていうくらいだから、ふたりとも大使なんだろうね。

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なんかこれドクロっぽい。
なんだろ?
あんまりこの国同士がいい関係じゃなかったのか?

って程度考えて、次の絵に行くところですよ、たぶん。

この本には、この絵の背景としてこんなことが書かれています。

この肖像は、イギリスのローマ教会離脱を阻止する為に派遣された、ふたりのフランス大使──騎士と司教──を描いたもの。
当時ヘンリー8世が、アン・ブーリンと再婚したい一心で王妃を離縁しようとしていたのです。
カトリック教会は離婚を認めませんから、ヘンリーがアンと再婚することになれば、それは即ちイギリスの新教化を意味し、国際政治に大きな影響を与えます。
フランスは何としてもヘンリーを説得すべく、有能なふたりを送り込んだのでした。

これでまず、この大使は同じ国の人なのねぇ。
そういう使命があったのねぇ。

ってことがわかります。

それから。
政治的に重要な1533年4月11日を表す日時計。
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テーブルの上の天体儀や地球儀などが彼等の知識を、弦の緩んだリュートが新教と旧教の不和を表し。

カーテンの陰。
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この磔刑像が、彼等の目的が政治的であると同時に宗教的なものであることを暗示しているんだとか。

これ以外にも、小物の意味などあれこれと書かれています。
ここまでわかって見ると、絵を見る面白さがグッと増すと思いませんか?

今度絵画展でムスメと見たら、きっとエラソーに解説しちゃうな、私w

他にもいろいろな絵や、歴史的背景の話が出てきて、世界史はあまり得意じゃない私は思わずネットでその人物を調べてみたりもして、話としても楽しめました。

マリーアントワネットの話あたりでは、ルイ・シャルルのことにもさらっと触れられていまして。
フランス革命は、中学生くらいの頃にベルサイユのばらにハマってちょっと調べた覚えがあるのですが、マリーアントワネットの次男ルイ・シャルルのその後については全然知らなくてですね。
動物以下の扱いを受けて死んでしまった、って書かれていたから何があったんだろう?ってあとからネットで調べたら、もう本当に本当にひどくて。
彼がまだムスメと大差ない子どもだったってことを考えて、数日間は暗い気持ちになっちゃいましたよ。
閉じ込められた光も射さない部屋の壁に「ママ、あのね……」って刻まれた文字があったというけれど、彼が伝えたかったことはなんだったのかな(´・ω・`)

と、まぁいろいろと知ったり、調べるきっかけになったり、単純に読み物として面白かったです。

本のタイトルには怖いと書かれているけれど、ホラー的要素というよりは、人間のドロドロした情念って怖いよねって感じ。

同じ作者さんの他作品も読んでみたいかも。


「怖い絵」で人間を読む (生活人新書)

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